設立趣旨


NPO法人目からウロコは、桃山学院大学教授の高橋ひとみ先生の著書「こどもの近見視力不良」を読んだことをきっかけとして、何か行動できることはないのかという趣旨で始めたものです。
会員の方には入会時に配布させていただきますが、以下著者の「はじめに」の部分を掲載させていただきます。

「本書は、子どもの「近見視力不良」について、健康教育学の分野から、その原因と学校や家庭での日常生活におけるハンディ、改善・予防法などを解説した本です。
視力には、遠くを見る視力「遠見視力」と近くを見る「近見視力」があり、私たちは「遠見視力」「近見視力」のどちらも使い、日常生活を送っています。
学校生活においては学習を円滑に進めるうえで、黒板の文字が見える 「遠見視力」と、教科書や能との文字が見える「近見視力」との両方が必要です。
しかし、現在学校で行われている視力検査は、遠くが見えているかを調べる「遠見視力検査」です。ですから、「遠くが見えにくい」子どもは発見されますが、「近くだけが見えにくい」、つまり「近見視力のみ不良」の子どもは、遠くが見えているということで見逃されているのです。
学校の視力検査では「近見視力のみ不良」の子どもは、発見できないのです。老眼のように、以前「見えた」という経験がある大人なら、「視力の低下」が自覚できます。しかし、子どもは成長につれてしだいに見えるようになるので、近見視力不良になった子どもは、「見えた」という経験がありません。
「近くがぼんやり」としか見えなくても、それが「異常」とは思わず、普通のこととして受け入れ、自分から「近くが見えにくい」とは訴えません。本人は気づかないのです。
視力不良の自覚がなくても、近見視力不良の場合、日常生活でさまざまな不便がい起こります。学習では教科書やノートの文字が読みにくかったり、算数で位取りを間違えたりなど、勉強がはかどらず、学習能率が低くなります。
しかし、「近見視力」についての情報が少なく、一般的に知られていないため、「視力の問題」による不便であるにもかかわらず、「能力不足」「努力不足」とみなされたりするのです。
近見視力不良であっても、早期の適切な対処(目薬・眼鏡・手術・生活管理など)により視力の改善は期待できます。そうすれば不便なく「目からの情報」を得ることができ、学習能率もあがります。
学童期の学習能率は、その子の一生に関わることでもあり、さらには、その子が属するクラス全体の学習能率にも影響します。
そのうえ、遠視などが原因の近見視力不良の場合、対処する時機を逸すると弱視になることもあります。近見視力検査に費やす時間を懸念する向きもありますが、学習能率が良くなることを考えれば、検査の時間などすぐ回収できます。
それに、近見視力検査に要する時間は遠見視力検査と同程度、本書で紹介している簡易近見視力検査なら1〜2分ほどで、検査方法も簡便です。
何よりも子どもたちが健康で快適な学校生活を送れるようになることが重要なのです。
本書によって近見視力検査が重要であることを多くの方に知っていただき、健康教育学に携わる者として、また子供を持つ親として、近見視力検査が学校などの健康診断に導入され、未来を担うすべての子どもが快適な人生を送れるようになることを願っています。
(高橋ひとみ著『子どもの近見視力不良』(農文協刊) 「はじめに」より許可を得て転載)